「パープルリボン」が、女性への暴力は許さないという世界的活動の意思表示だということは社会にも知られてきつつあります。
わたしたちは20年以上前から青森でDV被害者支援に関わっています。
役所などへの同行、調書の作成、相談業務、民間シェルター運営もしました。支援を続けても、次から次へと被害の訴えがやむことはありません。 加害があるから被害がある、だから誰かに暴力をふるう側の加害者を何とかしてもらいたいと願ったものでした。
長期の被害者支援に疲れを覚え始めた頃、東京の民間機関アウェアがDV加害者教育のファシリテーターを養成していることを知りました。 この加害者教育プログラムは、被害者支援の一つの方法であるというところに気持ちが動きました。 2014年、それまで東北にはなかった加害者のグループワークを仙台市で実施する運びになりましたが、青森には家族も友人も家も男女共同参画を推進する活動もあり、現在も仙台青森間を往復の日々です。
2018年からは青森市で「パープルリボンまゆらAOMORI」松山佳子が活動を始め、DV被害女性支援に向けて新たなアプローチをしており、心強いことです。
さて「パープルリボン」はご存知でも「まゆら」はなじみがないと思うので、紹介させてください。
私たちはグループ名を考えるにあたり、メンバーの名前から「ま」と「ゆ」を使おうと思いました。 そのときDVサバイバーである仲間の一人が「まゆら」という明王の存在を教えてくれました。
以下は「まゆら明王」について、ウィキペディアの助けも得ながらですが…。
「まゆら」を表す孔雀明王は、憤怒の形相が特徴である明王(たとえば不動明王とかのお顔)のなかで、ただ一つ慈悲を表した女性形の菩薩様です。 羽を広げた孔雀の上に乗り、4本の手にそれぞれ人を助ける道具を持っています。
孔雀は、人を怖がらせたり人に嫌がられる毒蛇やサソリを食べて懲らしめます。 このことは、毒を持つもの、つまり人の毒性(むさぼり等愚かな行い)を喰らって仏の道に導く功徳のある存在ということができます。
DVという犯罪・人権侵害である暴力に立ち向かうシンボルとして「まゆら」はぴったりでした。
私たちも、暴力をふるう人の中にある*暴力を肯定する考え方*に気づき、彼らの行動変革によって、被害体験者の日々を少しでも安心安全と喜びを感じられるものにするお手伝いをしたいと思います。
虹色の羽を大きく広げるオスの孔雀を従える女性像は、凛としてカッコよく、あたたかいのです。
仲間のひとりが言いました。「人はもともと完璧だけど、間違った知識により暴力的な行動をとることがあるよね」。
この、「人はもともと完璧」という考えに「えっ!? 人ってもともと完璧なのかなぁ…」と思いながらも彼女から刺激を受け、「そっかー、もしかして、わたしってこのままでいいかも」と思うこともあります。
ここで一つ付け加えますと、 孔雀の羽の虹色(レインボーカラー)は多様性を認める色でもありましょう。
さまざまに「色」を持つ個々の私たち。 人の色を否定する必要はなく、どんな色もその人のもの。 なのでLGBTs(性的少数派)への理解を進める活動もわたしたち「まゆら」のたいせつな分野です。
「まゆら」のキャッチデザインはウェブデザイナーのガマンナオキさんと相談しながら作りました。 たくさんの色をちりばめた羽をもつピーコックに、目を入れるか入れないか、まつげはつけるか、その位置をどうするか、そんなことまで楽しみながら決めました。 DVの加害者被害者をつくらない活動として、若い世代の彼女のサポートなしには決められなかったことがたくさんありました。 この場を借りて心から感謝します。
非暴力社会をめざす小さな小さな活動体「まゆら」をどうぞよろしくお願いいたします。
パープルリボンまゆら 田仲 昌子(tanaka masako)